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2006年4月23日 (日)

未来からの挑戦

1970年代のテレビ番組で、NHK総合テレビの午後6時台に放送されていた「少年ドラマシリーズ」。今は、こういう企画はとてもできないのだろうが、なかなかの秀作揃いだった。スタジオのセットは貧弱でも、丁寧につくられていて、当時子どもだった私にとっては楽しみな時間でもあった。

題材は、文芸小説からオリジナル脚本まで様々。その中で年に何回か作られるSFシリーズ。現実では起こり得ない内容を少しスリリングに描き、私達を期待と恐怖に誘い、釘付けだったような気がする。SF作品の第一作は、筒井康隆作の「タイムトラベラー」そこから始まり、当時のSF売れっ子作家の光瀬龍・眉村卓の両氏の作品は、何度か映像化された。その中で、私が一番印象に残ったのは1977年放送の「未来からの挑戦」。この作品は、眉村卓氏の「ねらわれた学園」が原作。

SF作品は、概ね、核戦争の悲劇や公害など行過ぎた科学をモチーフにするものが多い。作品を通じて、戦争の悲劇や公害の悲惨さなのどを伝えるもの。別世界からやってきた人物と現代人の出逢いから始まる。同じ眉村卓氏の「なぞの転校生」はまさにこのいい例だった。しかし、「ねらわれた学園」は少し違う観点から書かれていた。

この物語、現在の自由な風潮が未来で、秩序を乱し世界が混乱している。そのため、過去を変革しようという未来人が現代にやってくる。はじめは、生徒会で大改革がされる。未来人の拠点となる学習塾出身者でまず生徒会を牛耳っていく。規則を守らない生徒や、規律を乱す生徒を生徒同士がパトロールという形で取り締まって行き、だんだん身動きがとれないようになっていくことの恐怖を描いた力作であった。この物語の面白い点はここである。身近にすぐ起こりそうな状況を設定している。そして生徒同士で規則遵守や規律を正すために、互いに監視し合うという一見、正しい行為にみえる内容の裏に隠された、言論の統制。監視員の判断は絶対という恐怖。それが全体主義へとつながり、ファッショへと変化していく。これは、大人の世界でもほんのちょっとしたきっかけからすぐに起こりえる恐怖である。

多くのクラスが、未来人側の生徒会になびく中で、主人公のクラスだけが、反旗を。未来人側の生徒会長の言葉が光った。「あなたたちは、学校に反旗をひるがえしたのですね。これからはあなたたちを生徒扱いしないことにします」と冷たく言い放つ。そこへ主人公が、「だれがそんなことを決められるのか?」と尋ねると、「生徒全体です。そしてその代表機関である私達が執行します」。う~ん、こんなこと、今の日本にも起こりそうじゃないの?自民党の絶対多数で、様々な法案が知らないうちに可決されているよ。

そして、学習塾のシーンで唱えられている言葉「正しい指導者の命令は常に、正しい」。これもどこかの国みたいな感じ。

ねらわれた学園は、その後薬師丸ひろ子主演で映画化されたが、大林宜彦監督は、薬師丸のイメージと全体として映像にこだわったせいか、原作とはかなりかけ離れてしまった。また民放でも何度かドラマ化されたが、超能力シーンを強調しすぎ、安っぽいものになった感じだった。NHK作品は、「未来からの挑戦」とタイトルを変え、同じ眉村卓氏の「地獄の才能」という作品からキャラクターを借り、原作にはない設定をつくり、話をふくらましたが、前半の部分は「ねらわれた学園」の原作を忠実に生かしていた。特に、生徒会が徐々に生徒の自由を奪っていくシーンや、クラスで反抗するシーンなど、当時の私からみて迫力のある作品だった。

昔買った原作本を、最近再び読んでみた。大人の私が読んでも、実の面白い。最近こういう作品も少なくなったし、ましてドラマ化はほとんどない。とても懐かしく感じたひと時だった。

懐かしのNHK少年ドマラシリーズ」というホームページで、作品のあらすじが紹介されている。

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コメント

私もNHK少年ドラマシリーズをよくみていました。特に未来からの挑戦は大好きでした。少年ドラマシリーズの再放送を大人になってからも期待していましたが当時のフィルムが残っていないということですね。でも根強いファンの希望もあってか少年ドラマアンソロジーというDVDが発売されていたのですね。もちろん今は持っています。主演の佐藤宏之さんのファンでしたが今は俳優の仕事はされていないようですね・・・少年ドラマシリーズから紺野美沙子さんや古手川祐子さんが後に女優さんとして活躍されましたね。

投稿: | 2012年1月27日 (金) 16時05分

コメントありがとうございました。私もDVDで当時の映像を懐かしく見ました。今のドラマと比べ、セットなどは貧弱な感じもしましたが、ドラマの内容は色あせていないですね。原作となった「ねらわれた学園」は、SF小説の中でもトップクラスのものだと今だに思っています。環境問題や戦争の悲劇を扱う作品が多い中で、人間の内面を描いたもの。「全体の正義」のという大義名分の中に忍び寄るファシズムの恐怖。隣国のことだけではなく、日本の中でも実際に起こり得ることではないかと。セリフのひとつひとつに迫力がみなぎっていました。クラス会議で、パトロール委員に反抗するシーンは30年以上経過した今でも鮮明に蘇ります。

投稿: AA | 2012年1月30日 (月) 00時22分

当時、夢中になりました。
飛鳥清明が私の理想でしたね。。

改めて本作を振り返ると・・・今の日本とダブりますね。
指導者は、嘘が矛盾が発覚しようとも、常に絶対に正しく、それに対して異を唱えるとマスメディアが反対論者を徹底的に叩き潰す。

飛鳥清明こと熊谷俊哉さんの逝去が日本の「未来」に警告を発してるような気がしてなりません。
漠然とする不安。

40年近く前の少年ドラマなのに・・・濃すぎます。

投稿: | 2016年8月 6日 (土) 20時33分

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